「睡眠負債」と、その解消法

数年前、経済協力開発機構（OECD）の発表した「日本人の平均睡眠時間は、加盟国36カ国中最下位（2018年調査時）」というニュースが話題となりました。で、その気になる日本人の平均睡眠時間は「7時間22分」（調査時）だとか。「なんだ、意外と寝てるじゃない」と思った人も、けっこういるのでは？

厚生労働省の『国民健康・栄養調査』によれば、平成20年に睡眠時間が「6時間未満」と答えた人は、男性27.7％、女性32.0％とほぼ3割。ところが令和元年になると、男性37.5％、女性はなんと40.6％まで増加しています。つまり、日本人のほぼ4割は、睡眠時間が6時間もないんですね。

なお、2003年にアメリカ・ペンシルベニア大などの研究チームは、21～38歳の健康な成人48人を対象とした実験の結果、「6時間以下の睡眠を2週間続けると、集中力や注意力は2晩徹夜したのとほぼ同じ状態まで衰える」と報告しています。しかも、6時間以下の睡眠だった当人（被験者）たちは、自分の脳のはたらきが衰えていることに気付いていなかったとのこと。私たちの周りには、2徹状態の人が運転する車がゴロゴロいるのかも、と考えると、ちょっと怖いですね。

こうした、自分では気付かないうちに蓄積されていく睡眠不足、いわゆる「睡眠負債」がもたらすのは、日中の眠気や意欲低下、記憶力減退といったパフォーマンス低下だけではありません。慢性的な睡眠不足は、ホルモン分泌や自律神経機能にも影響を与え、生活習慣病やうつ病、さらには認知症になるリスクが高まる可能性も指摘されているのです。

というわけで、「昨日2時間しか寝てないわ、つれーわー」と懐かしい感じの自慢をする人や、「激務だけど、3時間寝れば平気な体になったよ」と弱々しく微笑む人には、「あとで後悔しますよ」と耳打ちしてあげましょう。

さて、貯まりに貯まった睡眠負債を解消しようと、休日に「寝だめ」をしても、効果はありません。むしろ生活リズムが乱れて、翌日以降の睡眠に悪影響を与えてしまいます。結局、毎日の睡眠時間をきちんと取ることが一番。負債はコツコツ、地道に返済していくしかないのです。

さらに、単純に毎日の睡眠時間を長くすればいい、というものでもありません。長時間寝ても、睡眠時間の多くがうたたねのような「浅い眠り（レム睡眠）」ばかりでは、脳をしっかり休ませることができないのです。脳の休息のためには、「深い眠り（ノンレム睡眠）」をきちんと取ることが大切。……といわれても、眠りの深さなんてコントロールできませんよね。

そこで、人気が高まっているのが「質の高い睡眠」へと導く機能性表示食品。ここ数年、GABA（γ-アミノ酪酸）やグリシン、L−テアニン、ラフマ由来ヒペロシド及びラフマ由来イソクエルシトリンといった、「睡眠の質の向上に役立つ」とされる機能性関与成分を含む商品が、各社から続々と登場しています。もちろんドラッグストアには、タブレットタイプやドリンクタイプなど、成分や剤形の異なる商品がいっぱい。自分は睡眠不足だと感じる人は、店員さんに一度相談してみるのがおすすめです。

また、睡眠の質を高めるには、睡眠環境を整えることも重要。体に合った寝具を選び、寝室の温度や湿度を調節するほか、寝床でテレビやスマホといった、強い光源を見るのもやめましょう。

「8時間以上寝たのに、なんだか寝足りない」なんてときは、睡眠の質が落ちている可能性があります。睡眠の質を高めて、日々の生活の質も向上させましょう！