【死にたくない!】コーヒーの致死量を調べてみた【カフェイン中毒!?】

コーヒーは健康にいい、という話はよく聞きます。一方、コーヒーに含まれるカフェインは、摂り過ぎると健康被害をもたらすだけでなく、死亡に至らしめることもあります。健康のために命をかけてコーヒーを飲む? なんだか本末転倒ですよね。では、一日にコーヒー何杯までなら、死なずにすむのでしょうか。

目次

1日4杯までなら、むしろ死亡リスクが減少!

コーヒーを飲み過ぎると死ぬ!? そんな話を聞いたことはありませんか。

コーヒーと死亡リスクの関係については、国立がん研究センターが2015年に公表した研究結果があります。

それによると、コーヒーを飲まない人よりも、何杯か飲む人のほうが、死亡リスクが低いということがわかったそうです。

コーヒーをほとんど飲まない人の死亡リスクを「1.00」とした場合
コーヒー1日4杯までは、摂取量が増えるごとに死亡リスクは徐々に減少していることがわかります。5杯以上で増加に転じていますが、それでも「ほとんど飲まない」という人よりもまだリスクは低くなっています。

この結果から、同センターは、1日4杯までのコーヒー摂取は、死亡リスクの低下と有意な関連があるとしています。

寝不足のときやランチを食べたあとの仕事中など、眠気覚ましに毎日何杯も飲んでいる人は少なくないと思いますが、健康のことを考えると、ひとまず4杯を目安にしてみるのがよさそうです。

なお、コーヒーの摂取によって死亡リスクが低下する理由は、コーヒーに含まれるカフェインクロロゲン酸類(ポリフェノールの一種)などの成分が、死亡につながる危険因子の調整に関与しているのではないかということだそうです。

でも、摂り過ぎると死亡することもある!

あれっ? じゃあコーヒーはむしろ死ににくくなるじゃん! と思った方もいるでしょう。

実はというかやっぱりというか、コーヒーによる健康被害の報告もあるんです。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の「素材情報データベース」によると、以下のような健康被害の可能性が報告されています。
頭痛利尿胃の苦痛神経質嘔吐不眠不安激越耳鳴り不整脈が起こる可能性がある

●短期間または長期間の飲用は、カフェイン中毒症状である不安やその進行症状であるせん妄興奮を引き起こす可能性がある

●慢性的な過剰摂取は耐用性習慣性精神的依存を引き起こすことがあり、カフェイン摂取の突然の中止により身体的禁断症状をもたらすことがある

●消化性潰瘍疾患またはヘリコバクターピロリの治療を受けていない人で、コーヒーの摂取量が3杯/日以上でヘリコバクターピロリ菌の感染リスクが増加した

●妊娠中の過剰摂取は、流産の危険性が高まる可能性がある

●小児では、成人よりも重篤な有害事象が起きる可能性がある など
また、以下のような被害事例も報告されています。
●多種の向精神薬を服用している31歳男性(日本)が、コーラおよび砂糖入りコーヒーを毎日6~9L摂取したところ(摂取期間不明)、四肢の疼痛により自力歩行が困難となり、医療機関を受診したところ、コーラおよびコーヒーの多飲が原因と考えられる低カリウム血症性四肢麻痺と診断された

●44歳女性(台湾)が、ブラックコーヒー4カップ(1L)を数時間のうちに摂取。6時間後に吐き気、嘔吐、胸部絞扼感、筋痙攣、動悸、茶褐色尿を生じて医療機関を受診したところ、カフェイン過剰摂取による横紋筋融解症と診断された

●高血圧の既往がある61歳女性(日本)が、ジョッキ5杯/日のアイスコーヒーを1カ月間1.5~2L/日のコーラを2カ月間摂取したところ、腰部の違和感と四肢近位部の筋力低下などを生じ、医療機関を受診したところ、低カリウム血症性ミオパチーと診断された など
コーヒーではありませんが、2015年には、日本で初めて、エナジードリンクの過剰摂取によるカフェイン中毒で死亡したニュースが話題となりました。それ以外にも、エナジードリンクカフェイン入りの錠剤などによって、カフェイン中毒カフェイン依存などに陥る若者たちのニュースが、たびたび話題になりました。

これらの被害事例をみると、通常では考えられない量のコーヒーやカフェイン含有飲料を摂取したことが原因となっているようです。そのため、通常の生活をしていれば、急性カフェイン中毒などの健康被害が起こる可能性は低いと思われます。

とはいえ、安心してばかりもいられません。

なぜなら、私たちの身の回りには、カフェインが含まれている商品がいっぱいあるからです。

カフェインがいっぱい! コーヒーに含まれるカフェイン量って…

では、どんなものに、どれくらいのカフェインが含まれているのでしょうか。

主な飲料中のカフェイン濃度は、次の通りです。

農林水産省「カフェインの過剰摂取について」および食品安全委員会ファクトシート「食品中のカフェイン」より作成

噂のエナジードリンクはさておき、コーヒーが一番かな、と思いきや、玉露がハンパないですね。コーヒーもさすがという感じのカフェイン量。それ以外の、紅茶やウーロン茶などのお茶類は、それなりといったところでしょうか。なお、コーヒーに含まれるカフェイン量は、粉などのインスタントでも、レギュラーコーヒーでも変わりません。

ちなみに、一般用医薬品のかぜ薬に配合されるカフェイン量は、1日あたり150mg、眠気防止薬に配合されるカフェイン量は、1回あたり200mg1日あたり500mgが上限とされています。

単純計算で、烏龍茶のペットボトル(500mL)を2本飲めば、眠気防止薬1回分のカフェインを摂取することになります。暑い日などは、それくらいサクッと飲んじゃう人も結構いるんじゃないでしょうか。これだけカフェインが含まれているとなると、中毒性や依存性など、安全性がちょっと気になりますね。

なお、コーヒーと薬の併用、エナジードリンクのカフェイン量については、こちらの記事(「コーヒーと薬の併用は、カフェイン過剰になるか―― 一方、エナドリは?」)をご覧ください。
【“カフェインレス”コーヒーには、カフェインが入っている!?】
コーヒーは好きだけどカフェインの摂り過ぎが気になる、という方が愛飲しているカフェインレスコーヒー。実は、カフェインが入っていないというわけではないんです。
「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」によると、「カフェインレスコーヒー」は次のように定義されています。
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公正競争規約第2条
(5)この規約で「カフェインレスコーヒー」とは、カフェインを90パーセント以上除去したコーヒーをいう。
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カフェインレスの表示があるからといってガブ飲みすると、カフェインの過剰摂取になるかもしれません!?

ついに判明!? コーヒーの致死量!!

眠気防止薬の上限はわかりましたが、じゃあ、コーヒーの上限量、つまり、致死量はどれくらいなのでしょうか。

カフェインの毒性に関しては、OECD(経済協力開発機構)の「SIDS」(Screening information data set:スクリーニング情報データセット)において、「LD50」(50%致死量:半数が死に至るという量)が示されています。LD50は、薬物などの毒性の指標として用いられているものです。
体重1kgあたりのLD50
ラット 200mg~400mg
マウス 185mg
仮に、人間のLD50をマウスと同じ185mg/1kgとすると、60kgの人では約11gとなります。これが、半数の人が死亡するカフェインの量です。

この量のカフェインをコーヒーで摂取するとなると、いったいどのくらいの杯数が必要なのでしょうか。

標準的なコーヒーカップを140mLとした場合、そこに含まれるカフェインの量は60mg×1.4=84mg(0.084g)となります。
11gを摂取するには、11g÷0.084g=131杯!

ほとんどありえない量ですね。
5分に1杯飲んだとしても、11時間くらいかかります。しかも18L以上のコーヒーを飲まなければいけないんです。絶対に無理ですね。

ただこれは、マウスで調べた値であり、死に至るのは半数です。また、人間にあてはめたとしても、体重や健康状態などにより、この値は変わってくる可能性があります。そのため、これだけコーヒーを飲んだからといって必ず死亡するわけではありませんし、逆に、それ以下の量で死ぬ可能性も捨てきれません。

いずれにしろ、常識的なコーヒーの飲み方をしている限り、「コーヒーの飲み過ぎで死ぬかも!?」という心配はしなくてよさそうです。

コーヒー好きのみなさん。ひとまず安心ですね!?