令和元年夏。また今年も日差しと戦う季節がやってきた。

夏休み。海水浴。蝉しぐれ。 ああ、毎年この季節になると思い出す……、紫外線!  環境省が日傘男子を推奨したり、東京都が「かぶる傘」を発表したりと、今年は日差し対策界隈がにぎわっているようで。元号も令和になったことだし、ここで改めて、夏の日差し対策を確認しておきましょう。

目次

紫外線との市街戦!? 屋内でも油断大敵。

紫外線による健康被害

日差し、日射し、陽射し。どのような漢字で書いても、降りそそぐものはいっしょ。赤外線、可視光線、そして、お肌の天敵、紫外線

紫外線の何が問題かって、健康に悪影響があるってことです。紫外線が関係していると考えられている健康被害には、急性のものと慢性のものがあります。
■急性の健康被害
・日焼け(サンバーン:赤くヒリヒリした日焼け、サンタン:黒くなる日焼け)
・紫外線角膜炎(雪目)
・免疫機能低下

■慢性の健康被害
・シワ
・シミ、日光黒子
・良性腫瘍
・前がん症(日光角化症、悪性黒子)
・皮膚がん
・白内障
・翼状片
厚生労働省「紫外線環境保健マニュアル2015」
こんなにいろんな影響があるんですね。「男子が日傘さすとか傘を頭にかぶるとかありえない」なんて思ってすみません。これからはかぶる日傘男子として、堂々と街中を歩きます!

日陰や屋内にも届く!?

なんて思っていたのもつかの間、実は、日陰や屋内も完全に安心というわけではないようです。もちろん可視光線(いわゆる「光」)と同様、紫外線は建物や衣服で遮断されます。なので、日向よりも日陰のほうが、紫外線の量は当然少なくなります。

ですが、紫外線は、太陽から直接届くもの以外に、空気中散乱するものや、地面反射するものもあります。そのため、日陰でも日向の50%、屋内にいても屋外の10~20%程度の紫外線を浴びる可能性があるといわれているんです。

ちなみに、水深50cmでも紫外線は地表面で浴びる紫外線の40%程度の強さがあるので、海に入っていても日焼けする可能性はあるんですね。
雲を透過する紫外線量:80%
日陰での紫外線の強さ:日向の50%
水深50cmの紫外線の強さ:地表面の40%
砂浜の紫外線の反射率:50%
新雪の紫外線の反射率:80%
高度1000mの紫外線量:+10~12%
環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」
ですので、紫外線が気になる方は、たとえ自宅であっても、窓には近寄らないとか、遮光カーテンやブラインドを活用するなどの工夫が必要かもしれませんね。

室内にも紫外線が届く可能性はある

これで完璧!? 日差し対策の基本。

では、できるだけ紫外線を浴びないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。
環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」では、次の6つの対策をあげています。

(1)紫外線の強い時間帯を避ける。
紫外線は、太陽が最も高くなるとき(南中)に最も強くなります。場所や季節によっても違いますが、おおよそ正午前後に該当するので、外出する際は、この時間を避けるといいでしょう。

(2)日陰を利用する。
どうしても外出しなければならない場合は、日陰を活用するのも手です。ただし、直接降りそそぐ日差しを遮ることはできますが、空気中で散乱したり地面で反射したりする紫外線は避けられません

(3)日傘を使う、帽子をかぶる。
日陰だけを歩くなんてできるわけがありませんから、日傘帽子を使用するのはいいアイデアです。ただし、日陰と同様、散乱した紫外線や反射した紫外線を浴びるということは覚えておきましょう。

直接降りそそぐ日差しには日陰、日傘、帽子などが効果的

(4)衣服で覆う。
夏には肌を出したくなりますが、紫外線のことを考えたら、長袖を着るのがいいでしょう。目地の詰まった生地ほど紫外線を通しにくいですが、夏にそんなものを着ると熱中症の危険があります。夏でも着心地の良い、通気性があるものを選ぶといいでしょう。

(5)サングラスをかける。
紫外線による健康被害は、皮膚だけではなくに対しても起こりえます。UVカット仕様のサングラスであれば、眼に入ってくる紫外線の量をほとんどカットすることができます。ただし、眼に入ってくる紫外線は、レンズを通ってくるものだけではありません。レンズと眼のすき間が大きいほど、そこから紫外線が入ってくる可能性が高くなりますので、自分に合ったサングラスを選ぶことが大切です。

ちなみに、レンズの色が濃いほどいいかというと、必ずしもそうではありません。レンズの色が濃いと、光をより取りこもうとして瞳孔がいつも以上に大きく開くので、紫外線も多く入ってきてしまう可能性があるのです。

(6)日焼け止めを上手に使う。
どうしても半袖を着たい! などで肌が日光にさらされてしまう場合には、日焼け止めを使うといいでしょう。日焼け止めについては、次ページで詳しく説明します。

まさかそんな!? 日焼け止めのウソ・ホント。

紫外線と日焼け止め

夏になると、ドラッグストアの店頭には、これでもかといわんばかりに日焼け止めが並びます。その中からお気に入りの品を見つけられるように、ここで少し日焼け止めについて解説します。

紫外線は、波長の長さやその性質によって、大きく「UV-A」「UV-B」「UV-C」にわけられますが、日焼け止めの対象となっているのは「UV-A」と「UV-B」です。

「UV-C」は、気象庁曰く、「成層圏及びそれよりも上空のオゾンと酸素分子によって全て吸収され、地表には到達しません」ということなので、いまのところとくに考慮されていないようです。
■UV-A
 UV-Bほど有害ではないが、長時間浴びた場合の健康影響が懸念されている。
■UV-B
 ほとんどは大気層(オゾンなど)で吸収されるが、一部は地表へ到達し、皮膚や眼に有害である。日焼けを起こしたり、皮膚がんの原因となる。
■UV-C
 大気層(オゾンなど)で吸収され、地表には到達しない。
環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」
日焼け止めには「SPF(Sun Protection Factor)」と「PA(Protection grade of UV-A)」という効果表示があるのはご存知だと思います。

「SPF」は、肌を赤くするUV-Bを防ぐ指標で、「10」「35」などの数字で示されています。この数字が大きいほど、UV-Bを防ぐ効果が高いとされており、「50」を超える場合は「50+」と表示されます。

「PA」は、肌を黒くするUV-Aを防ぐ指標で、「PA+」「PA++」「PA+++」「PA++++」の4段階で表されます。「+」が多くなるほど、UV-Aを防ぐ効果が高いとされています。

SPFやPAは「効果が続く時間」ではない

日焼け止めの真実

ここで勘違いをしている人が多いのですが、表示されている数字や「+」は、決して、「日焼け止めの効果が持続する時間ではない」ということです。「SPF1=20分」なんて話も良く聞きますが、これも正しくありません。

この数字や「+」は、「この日焼け止めを塗った場合に、塗らなかった場合の何倍の紫外線量をあてると皮膚が赤く(黒く)なるか」を表したものなんです。SPF50の日焼け止めであれば、塗らなかった場合の50倍の紫外線量をあてて初めて皮膚が赤くなる、ということです。

なので極端な話、ほんの数十秒で日焼けをしてしまうほどの紫外線量がある場所では、SPF50の日焼け止めを塗ったとしても、20分×50=1000分持続するどころか、ほんの数分で肌が赤くなる、ということになります。反対に、曇りがちで紫外線量が少ない場所なら、日焼け止めを塗ることで、日焼けまでに何日もかかる、ということもあるかもしれません。

紫外線の量によって日焼けするまでの時間が違ってくるので、「数値が高い=持続時間が長い」ということにはならないのです。

日焼け止めの使い方

では、日焼け止めは何を選んで、どうやって使えばいいのでしょうか。

たとえばちょっとした買い物などであれば「SPF10前後」「PA+~++」の日焼け止めで十分です。軽いスポーツやレジャー程度なら「SPF20~30」「PA++~+++」、炎天下でのスポーツやレジャーの場合は「SPF50~」「PA+++~++++」を選ぶと良いでしょう。

日焼け止めを塗るタイミングは、当然外に出る前です。汗などで落ちたと思ったら、すぐに塗りなおします。そうでない場合でも、2~3時間おきに塗りなおすのが良いでしょう。

日焼け止めは外出前に塗りその後2~3時間おきに塗りなおす

準備OK!? 敵を知り、己を知れば紫外線対策も危うからず。

紫外線の量は、場所や季節、時間などによっても変わってきます。どこでどれくらいの紫外線が降りそそいでいるのかがわかれば、対策もしやすいと思います。

そこで参考になるのが、気象庁の「紫外線情報分布図」(予測値)と、国立環境研究所の「有害紫外線モニタリングネットワーク」(速報値)です。

どちらも、世界保健機関(WHO)が定めた「UVインデックス」に基づいて紫外線の強さを示しています。紫外線の強さによって色分けされているので、ひと目見ただけでもわかりやすく、服装や日焼け止めを選ぶ際の参考になると思います。
■気象庁「紫外線情報分布図」
http://www.jma.go.jp/jp/uv/
国立環境研究所「有害紫外線モニタリングネットワーク」速報値 UVインデックス(15局)とUV-A,B波グラフ(国立環境研究所所轄5局)
http://db.cger.nies.go.jp/gem/ja/uv/uv_index/index.html
令和最初の夏。
元号が変わっても、日差しは変わらず降りそそいできます。
対策をしっかり行って、快適な夏を過ごしましょう!