「夏バテに梅干し」は迷信だった!? 【食に関する言い伝えを検証する――梅干し(クエン酸)編】

「○○にはこんなパワーが!」「長寿の人は○○を食べてる!」など、巷では、食べ物にまつわるさまざまな効果がウワサされています。いったいどこまでがホントで、どこまで信じたほうがいいのでしょうか。気になるウワサを調べてみました。

目次

梅干しに含まれる「クエン酸」が疲労回復に効果アリ!?

「夏バテ」「梅干し」などで検索すると、「梅干しで夏バテ予防!」「夏バテに梅干しが良い理由」「梅干しで夏バテ知らず!」などなど、夏バテには梅干しだよね、っていう記事が大量にヒットします。

では、梅干しの何が夏バテにいいといわれているのでしょうか。

理由は色々あるようですが、代表的なものとして、クエン酸(Citric acid)をあげている記事が多いようです。

クエン酸サイクル(クエン酸回路)というのを、生物の授業で勉強した人もいるかもしれません。超大雑把にいうと、クエン酸が分解されたりほかの物質と結合したりして、生命活動に必要なエネルギーを生み出す仕組みのこと。

私たちが、食事などから得た栄養素をエネルギーとして利用するためには、クエン酸が重要な役割を果たしているのです。

このため、「クエン酸は疲労を回復する」「クエン酸は新陳代謝を活発にする」などといわれるのです。

信頼できる十分なデータが見当たらない!?

では、本当にそんな効果があるのでしょうか。

梅干しやクエン酸が疲労回復にいい、という医師や大学教授は、Web上でもチラホラ見かけます。でも、医師や大学教授は全国に何十万人といます。そのなかの1人や2人が「効果がある」といったところで、確実とはいえないですよね(肯定派のみなさん、すみません!)。

そこで、頼りになるのが、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所のWebサイト「『健康食品』の安全性・有効性情報」

国が確認した、健康食品の有効性などを掲載しているWebサイトで、ここならある程度(!?)信頼できる情報が得られそうです。

ということで早速検索してみました。データベースに「梅干し」はないので、「ウメ」の項目を確認します。そこには、

「リンゴ酸やクエン酸、コハク酸などの有機酸が含まれる」

「俗に、『抗菌活性がある』『消化器系への効果がある』などと言われているが、ヒトでの有効性については信頼できるデータが十分ではない

と、確かにクエン酸が含まれているようですが、疲労についてはとくに触れていません。

では、「食材じゃなくて成分なら?」と思い、今度は「クエン酸」を検索・確認してみると…

「俗に、『疲労回復によい』『筋肉や神経の疲労予防によい』『ダイエット効果がある』『痛風に効果がある』などと言われているが、ヒトでの有効性については、信頼できる十分なデータが見当たらない

Oh…。これまで信じていた人にはショッキングだったかもしれません…。

国(国立健康・栄養研究所)にいわせれば、まだまだ言い伝えの域を出ていないということでしょうか。

結論:食べたい人は食べる!!

ただ、昔から言い伝えられているということは、実際に効果を感じた人がいるからだと考えられます(その人の思い込みかもしれませんが)。それに、言葉尻を捕らえるようですが、国(栄養研)はあくまで「データがない」というだけで、「効果がない」とは書いていません。

ですので、梅干しを食べて「疲れが取れた」「食欲が湧いた」と感じるならそれでいいですし、疲れたときにドラッグストアでクエン酸入りの食品を購入するのもいいと思います。

いずれにしても、梅干しやクエン酸が夏バテに効果があるのかどうかと聞かれた場合、いまのところは「はっきりとしたデータはないけど、試したい人は試してみてください」といった感じになるんでしょうね。