マメドラ――ドラッグストアに関する豆知識――「第5回:界面活性剤」

世の中には、知っているようで意外に知らないことがたくさんありますよね。「どうして空は青いのか?」「人はなぜ生まれどこへ向かうのか?」のような自然の摂理や哲学はさておき、「知っているようで意外に知らない」そんなことがお近くのドラッグストアにも実はたくさんあるんです。ドラッグストアに関する豆知識、略してマメドラ、第5回は「界面活性剤」に焦点を当ててお送りします。

目次

新型コロナウイルスにも有効らしいけど、そもそも界面活性剤って何なの?

2020年5月22日、経済産業省から、新型コロナウイルスに有効な界面活性剤が公表され、随時情報が更新されています。
新型コロナへの有効性については経産省のWebサイトを見ていただくとして、みなさんは「界面活性剤」が何かご存知ですか?

パッと思い浮かぶのは、洗剤に入っている汚れをとる成分ということですよね。
「界面活性剤といえばあの泡でしょ!」と思っている方も多いはず。

ですが、実は界面活性剤の機能はほかにもあるんですよ。
簡単に記すと以下の通り。
(1)洗浄
言わずもがな、洗剤に配合する場合の目的のひとつ。

(2)乳化
水と油のように、混ざり合わないものどうしを混ぜる目的でも使います。
化粧品やインクのほか、マヨネーズのような食品にも活躍します。

(3)泡立てる、泡を消す
洗剤やシャンプーなどのように泡立てるために配合するだけでなく、インクや塗料のように泡立つと支障の出る(でも乳化はさせたい)ものに対して消泡剤として使われることも。

(4)殺菌、抗菌
コロナへの有効性報道で有名になりましたが、一部の界面活性剤には殺菌作用や抗菌作用があります。
消毒用に使われているベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウムともいう。いわゆる逆性石けん)などが有名です。

(5)柔軟剤、可塑剤、潤滑剤、耐電防止剤、防錆剤など
たくさんあり過ぎて書き切れないので用途だけ。

※おまけ
「界面活性剤=悪」と考えている方もいますが、卵のレシチンや野菜に含まれるサポニンなど、自然界にも界面活性剤はたくさん存在しています。
また、化学合成された界面活性剤でも、生物や環境にやさしいものがたくさん開発されているんですよ。
なぜこんなにも機能があるんでしょう?
その秘密は界面活性剤の化学構造にあります。
界面活性剤の分子を拡大してみると、1分子はこんな形をしています(イメージ図です)。

界面活性剤は、油になじみやすい親油基(疎水基)と、水になじみやすい親水基をもった構造をしています。
簡単にいうと、水にも油にも溶ける性質を持っているというわけです。
どちらにも溶けるということは、水と油に界面活性剤を加えれば、混ざり合いそうなイメージがわきませんか?(え、わかない? そういうものなんだということにさせてください(笑))

洗剤としてはたらくときは、親油基が油汚れにくっついて汚れを引き剥がし、水で汚れを洗い流すことできれいにします。
洗濯用洗剤のCMで、油が水中に浮かんで汚れが落ちていくシーンがありましたよね。
まさにあんな感じ。

そのほかの作用も、親油基と親水基がなんやかんやはたらくことで起こるんです。
要するに、「界面活性剤有能過ぎワロタwww」ということ。

え? なんやかんやって何だって?
なんやかんやは……なんやかんやや!(33分引き延ばす探偵っぽく)

さて、この界面活性剤、実は大きく4種類に分類されます。
この分類は、界面活性剤の親水基(イメージ図でいうところの丸い部分)の性質によって分けられます
それぞれどんなものなのか簡単にご紹介しますね。

歴史がいちばん古い! 陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)

陰イオン界面活性剤は、その名の通り、水中で陰イオン(マイナスイオン)になる界面活性剤
一般的な固形タイプの石けんがこれに該当し、その歴史は界面活性剤のなかでいちばん古いです。
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)ラウリル硫酸ナトリウムなども陰イオン界面活性剤です。
泡立ちが良く、温度の影響を受けにくいため、洗剤やシャンプーなど幅広く使われています。

「逆性石けん」なら聞いたことある人も多いはず! 陽イオン界面活性剤(カチオン界面活性剤)

陰イオン界面活性剤と逆で、水中で陽イオン(プラスイオン)になる界面活性剤
水中で陰イオンになる石けんとは逆の性質なので、「逆性石けん」と呼ばれることもあります。
○○アンモニウム塩」と書いてあるものが代表的な成分で、そのほかに有名な陽イオン界面活性剤としては、ベンザルコニウム塩化物があります。
マイナスに帯電している物質に強く吸着し、柔軟性や帯電防止性、殺菌性などを示すため、柔軟剤、リンス、消毒剤などの目的で使われます。

どっちも持たせちゃえ! 両性界面活性剤

水に溶けたときに、その水がアルカリ性なら陰イオン界面活性剤、酸性なら陽イオン界面活性剤の性質を示すのが両性界面活性剤
親水基の部分に、プラスイオンになる部位とマイナスイオンになる部位の2つがあり、水のpHによってどちらかが顔を出し(イオン化)ます。
カルボン酸塩型」「アミノ酸型」「ベタイン型」などに分類され、単独で使われるというよりも、洗浄力や起泡力を高める補助剤として使われることが多いです。

使いやすさ重視! 非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)

これまでに出てきた界面活性剤と異なり、水に溶けてもイオン化しない界面活性剤
水の硬度などに影響されにくく、ほかの界面活性剤と併用されることも多いです。
代表的な成分には「○○エステル」「○○エーテル」「○○エタノールアミド」「○○グルコシド」のような語尾がついていて、ほかにセタノールやステアリルアルコールというアルコールも非イオン界面活性剤に分類されます。
ものすごく使いやすい界面活性剤なので、洗剤やシャンプー、食品添加物など幅広く使われています。


奥が深過ぎて、ざっくり説明するか、細かく説明するか二極化してしまう界面活性剤。
これをどう日常生活で活かせるかは別途考えていただくとして(はい、丸投げです)、実は身近ないろんなところで役に立っているんだということをわかっていただければ何よりです。