不眠に効く漢方薬はどれ!? 【ジャストフィット漢方薬 第7回】

「春眠暁を覚えず」とはいいますが、環境が変わって「眠れない!」というお悩みが増えるのもこの時季。今回は、いわゆる「五月病」によくある症状のひとつ「不眠」に対応する漢方薬をご紹介しましょう。

西洋薬の不眠対応薬とどう違う?
一人暮らしを始めて、不安でいっぱい。職場が変わって、新しい環境になじめない。そうした不安・ストレスからなかなか寝付けず不眠に……。今回はそんな「不眠」に効く漢方薬の問題です。
【Q】
「体力には自信があるのに、ストレスや不安で眠れない」という人におすすめなのは、次の選択肢のうち、どの漢方薬でしょうか?


(選択肢)
1. 不眠といえば「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」

2. 1とよく似ている「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」

3. 女性にはおなじみ「加味逍遙散(かみしょうようさん)」

気になる答えは……、
  ↓↓↓

【A】
1. 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
【解説】
不眠に効く漢方薬には、「加味帰脾湯(かみきひとう)」など、いくつかあります。神経細胞にはたらきかけるなどして眠気を引き起こす西洋薬に対し、漢方薬は正常な眠りを妨げる体の不調を取り除くことで、自然な眠りを取り戻すという、そのアプローチに違いがあります。

お悩みに「体力には自信がある」とありますから、比較的体力のあるタイプと仮定して考えていきましょう。選択肢のうち、「体力中等度以上」(漢方でいう「実証」)の人に使われる処方は、「柴胡加竜骨牡蛎湯」になります。処方名にあるように「牡蛎(ボレイ:カキの殻)」が配合されており、イライラや焦りなどを鎮めるとされています。ストレスでイライラする、不安で眠れないといった人におすすめの処方です。

似たような名前の処方に、「桂枝加竜骨牡蛎湯」があります。こちらも不眠に対応する漢方薬ですが、処方名にあるようにボレイが配合されています。「柴胡加竜骨牡蛎湯」と違い、こちらは体力中等度以下の、比較的虚弱な人に使われます。

「加味逍遙散」は、女性の症状に使われることで有名な処方ですが、こちらにも不眠の効能があります。更年期など、ホルモンバランスの乱れによって引き起こされる不安・不眠などに使われますが、こちらも体力中等度以下の人に適した処方です。
各処方の効能・効果
●柴胡加竜骨牡蛎湯

体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症:高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘

●桂枝加竜骨牡蛎湯
体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの次の諸症:神経質、不眠症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経症

●加味逍遙散
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症
(注)「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。