地名がないのはあの国への忖度? いいえ、指針に基づいた命名です
WHOが命名した新型コロナウイルスによる感染症の名称は「COVID-19」。カタカナで表記すれば「コビッド-ナインティーン」。「COVI」が「coronavirus(コロナウイルス)」、「d」が「disease(疾患)」、「19」が「2019年」という意味です(なお、新型コロナウイルス自体の名称は「SARS-CoV-2」。日本語表記では「SARSコロナウイルス-2」です)。
名称の決定以降もアメリカは「武漢ウイルス」(病名ではないですが)と強気に呼んでいましたが、たしかになぜ、「スペインかぜ」とか「中東呼吸器症候群(MERS)」などのように、地名が入っていないのでしょうか。
あの国への忖度? 配慮? と勘ぐってしまいたくなる気持ちもわからないではありませんが、実は、そうではなかったんです。WHOの指針で、新しい病気を命名する際は「地名を使わない」とされていたんです!
名称の決定以降もアメリカは「武漢ウイルス」(病名ではないですが)と強気に呼んでいましたが、たしかになぜ、「スペインかぜ」とか「中東呼吸器症候群(MERS)」などのように、地名が入っていないのでしょうか。
あの国への忖度? 配慮? と勘ぐってしまいたくなる気持ちもわからないではありませんが、実は、そうではなかったんです。WHOの指針で、新しい病気を命名する際は「地名を使わない」とされていたんです!
動物、食品、文化、職業などの名称も使いません
WHOは、豚インフルエンザや中東呼吸器症候群などの病名により、豚肉に対する誤解や中東への偏見など、さまざまな悪影響が出たことをうけ、2015年5月、「貿易・旅行・観光・動物愛護に及ぼす無用の悪影響を極力防ぎ、あらゆる文化・社会・国家・地域・職業集団・民族集団の感情を害さないようにすること」を目的として、「ヒトの新興感染症の命名に係る最良規範」(「World Health Organization Best Practices for the Naming of New Human Infectious Diseases」)を発表しました。
指針では、病名に使用しないものとして、このようなものが定められています。
指針では、病名に使用しないものとして、このようなものが定められています。
病気に使わない名前 | NGの例 |
地名 | Middle East Respiratory Syndrome(中東呼吸器症候群)、Spanish Flu(スペインかぜ)、Rift Valley fever(リフトバレー熱)、Japanese encephalitis(日本脳炎)など |
人名 | Creutzfeldt-Jakob disease(クロイツフェルト・ヤコブ病)、Chagas disease(シャーガス病)など |
動物や食品の種名・種類名 | swine flu(豚インフルエンザ)、bird flu(鳥インフルエンザ)、paralytic shellfish poisoning(麻痺性貝毒) |
文化・集団・業界・職業的言辞 | legionnaires(Legion:在郷軍人集会)、miners(鉱夫)、butchers(精肉店)、cooks(料理人)、nurses(看護師)など |
不当な恐怖をかき立てる用語 | unknown(未知)、death(死)、fatal(致死)など |
一方、どういった病名が望ましいかというと、
・簡単な用語で、具体的な説明用語
(「呼吸器疾患」「肝炎」「進行性」「若年性」「冬」など)
・文字数が少なく、発音しやすい名称
(「H7N9」「マラリア」「ポリオ」など)
・病原体がわかっていればその名前
(「コロナウイルス」など)
(「呼吸器疾患」「肝炎」「進行性」「若年性」「冬」など)
・文字数が少なく、発音しやすい名称
(「H7N9」「マラリア」「ポリオ」など)
・病原体がわかっていればその名前
(「コロナウイルス」など)
など、これらを組み合わせて命名することを推奨しています。
たしかに、「致死性ニホンウナギ料理人ウイルス感染症」という病名を聞けば(たとえそれが日本以外の国で発見・流行したものであっても)、「日本でウナギ料理店に行くと死ぬかもしれないんだな」→「日本に行くと死ぬ」と、日本への不当な偏見や差別は多くなりそうですし、反対に「冬季限定! 進行性ウイルス呼吸器疾患」なら、誰も傷つかない気がします(感染した本人以外は)。
自分の住む土地名が病気の名前に入っていたら、ちょっといやな気持ちになりますよね。これを機に、いままで悪気なく「武漢」だの「中国」だの言っていた人も、正式名称の「コビッド-ナインティーン」を使うように心がけましょう。
たしかに、「致死性ニホンウナギ料理人ウイルス感染症」という病名を聞けば(たとえそれが日本以外の国で発見・流行したものであっても)、「日本でウナギ料理店に行くと死ぬかもしれないんだな」→「日本に行くと死ぬ」と、日本への不当な偏見や差別は多くなりそうですし、反対に「冬季限定! 進行性ウイルス呼吸器疾患」なら、誰も傷つかない気がします(感染した本人以外は)。
自分の住む土地名が病気の名前に入っていたら、ちょっといやな気持ちになりますよね。これを機に、いままで悪気なく「武漢」だの「中国」だの言っていた人も、正式名称の「コビッド-ナインティーン」を使うように心がけましょう。
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