2020年9月14日 更新

スポーツドリンク、始めに飲むか? 後から飲むか?

運動時の水分補給といえば、スポーツドリンク! ……なんですが、汗をかいてのどがカラカラなときに飲むと、「ちょっと甘過ぎる」と感じませんか? とはいえ、運動前に飲むなら別にスポーツドリンクじゃなくてもいい気がするし。うーん……。

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運動の前・中・後に、しっかり水分補給を!

「スポーツの秋」なんて言いますが、ここ数年、10月になっても最高気温が30℃を超えることは珍しくありません。気温が高いなかで運動をするときは、水分補給が不可欠です。

運動をするとエネルギー代謝が活発になり、体内で大量の熱が発生します。この熱を外に放出できないと体温がどんどん上がり、やがて脳などの重要な器官が熱でダメージを受けて、最悪、死に至ることも。そうならないように、人間に備わった放熱システムのひとつが「発汗」。かいた汗が蒸発するときの気化熱で、体を冷やすのです。

運動中に汗をかくと、体内の水分を失った分だけ体重が軽くなります。運動後の体重減少率(水分損失率)と、脱水症状の関係をまとめた表がこちら。
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たとえば体重60kgの人なら、1.2リットルの汗をかくと2%の水分を失ったことになります。日本スポーツ協会によると、運動中の発汗量は毎時1~1.5リットルに達することもあるとか(日本スポーツ協会「スポーツと栄養」)。なお、表にあるとおり、3%の水分を失うと汗が出なくなり、熱を体外に放出できなくなる危険があります

「運動中は水を飲まないほうがいい」なんて言われていたのは昔の話。現代のスポーツ界では、たっぷり汗をかけるように運動前に水分を摂り、運動中はのどの渇きを感じる前にこまめに水分補給、運動後には失った水分を素早く摂取する、という水分コントロールが常識となっています。

スポーツドリンクには2種類ある

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ところが、「たっぷり汗をかいたから」と真水をたくさん飲むと、逆に体調が悪くなることも。これは、汗にナトリウムやカリウム、カルシウムといった、体に重要なミネラル=電解質(イオン)が含まれているため。たくさん汗をかいて水分と電解質を失った体に水だけを補給すると、体内の電解質バランスが崩れてしまい、倦怠感や吐き気を覚えたり、意識障害などが現れたりすることがあるのです。

そこで、汗で失われる水分と電解質を素早く補給できるように開発されたのが、スポーツドリンク。スポーツドリンクに明確な定義はありませんが、大きく「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」の2種類に分けられます。
アイソトニック飲料<Isotonic(等張液)>
4~8%程度の糖質と、0.1~0.2%程度の塩分のほか、各種ミネラル、アミノ酸などを配合し、ヒトの安静時の体液に近い濃度に調整された飲料。
ハイポトニック飲料<hypotonic(低張液)>
2%程度の糖質と、0.1%程度の塩分のほか、各種ミネラル、アミノ酸などを配合し、ヒトの安静時の体液よりも低い濃度に調整された飲料。
2種類のスポーツドリンク、一番の違いはその「濃度」。高校の授業で習った<浸透圧>について覚えている方は、すでにピンときたかもしれませんね。

アイソトニックは運動前、ハイポトニックは運動中・後に!

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「<浸透圧>とはなんぞや?」という詳細な説明は省きますが、ざっくり言えば「水分は濃度の薄いほうから濃いほうへと移動する」というもの。体内の水分(体液)とスポーツドリンクの濃度の違いで、体への吸収され具合が違うのです。

「アイソトニック飲料」は、運動前の体に素早く吸収されるように調整されています。ところが、汗をかいて水分と電解質を失った体は、体液の濃度が低くなります。「ハイポトニック飲料」は、そうした運動中・運動後の体に吸収されやすいように調整されているのです。

なお、アイソトニック飲料には運動時のエネルギーともなる糖質が多く含まれています。そのため、運動をしないのに「スポーツドリンクって薄味だし、健康に良さそう!」なんて、ふだんから水代わりにガブガブ飲んでいると、「ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)と呼ばれる急性糖尿病まっしぐら、なんてこともあるのでご注意を。

また、「スポーツドリンクは甘過ぎるので、水で薄めて飲むといい」というウワサがありますが、これも間違い。水で薄めると調整された濃度が変わってしまい、想定していた吸収性能が発揮されにくくなってしまうのです。大量に汗をかいたときや、脱水症状で急いで水分を補給したいときにはハイポトニック飲料、またはハイポトニック飲料の一種でもある「経口補水液」を飲むとよいでしょう。

まだまだ残暑が厳しい季節。2種類のスポーツドリンクを使い分けて、上手に水分コントロールしてみてください。
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