2020年6月22日 更新

ステロイドって怖い薬じゃないの?――外用薬編

虫刺されや湿疹、あせもなど、我慢できないかゆみが起こりやすい季節。こうした肌トラブルに効果的なのが、ステロイドを配合した塗り薬(外用薬)です。でも、「ステロイドって何だか怖い」という人もいるようで……。

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そもそもステロイドって何なの?

ヒトの体内にある副腎という臓器では、体を維持するために重要な役割をもつ、副腎皮質ホルモンが作られています。このホルモンは血液に乗って全身を回り、ほんの少量でさまざまな組織に作用します。この作用を薬として応用するために、副腎皮質ホルモンを化学的に合成したものがステロイド性抗炎症成分、いわゆる「ステロイド」です。

ステロイドって何がすごいの?

ステロイドは細菌やウイルスなどを殺菌・消毒したり、傷を治したりする成分ではありません。

ステロイドは、炎症の悪化を防いだり、患部の末梢血管を収縮させたりすることで、炎症を抑える(抗炎症作用)成分です。そのため、外用薬(塗り薬、点鼻薬など)として使用すると、湿疹や虫刺され、アレルギー性鼻炎などによる、かゆみや痛み、はれといった症状に優れた効果を発揮します。

正しく使用すればとても効果的な成分で、外用薬のほか、病院では内服薬(飲み薬)や点滴・注射として、さまざまな病気の治療に使われています。

ステロイドを怖がる人がいるのはなぜ?

どんな薬にも副作用はあるもの。内服薬や点滴などで投与されたステロイドは、血液とともに全身を回るため、骨粗鬆症や糖尿病、高血圧といった全身性の副作用が起こることもあります。そのため、病院では症状や体質などに合わせてステロイドの強さや量を調節し、副作用の予防薬投与や検査など、さまざまな対策をとっています。

ところが、この副作用の部分だけがメディアなどで取り沙汰され、「ステロイドを使うと骨粗鬆症や糖尿病、高血圧になりやすい」という誤った認識が広まったことで、今も「ステロイド=怖い薬」と思いこんでいる人がいるようです。

そもそもステロイド外用薬は、内服や点滴に比べると、皮膚や粘膜から体内に吸収される量がとても少ないもの。正しく使用すれば、全身性の副作用を引き起こすことは、非常にまれと言ってよいでしょう。また、患部では優れた効果を発揮しますが、体内に吸収されると分解されて、はたらきが弱くなるように調整された、「アンテドラッグステロイド」というステロイド配合の外用薬もあります。

ステロイド外用薬で起こる副作用は?

ステロイド外用薬に関するウワサとして「ステロイドを塗ると皮膚が黒ずむ」「1回使うとやめられなくなる(使うのを止めると、症状が前よりも悪化する)」「長く使うと体内に蓄積される」などがありますが、どれも事実ではありません。

ですが、すべての薬がそうであるように、ステロイド外用薬も「副作用が絶対起こらない」というわけではありません。主な副作用としては、次のようなものがあります。
・多毛(毛が太くなる)
・皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)
・毛細血管拡張(毛細血管が目立つ)
・毛嚢炎(ニキビに似た感染症が起こる)
なお、こうした副作用の多くは、塗ったところ(局所的)に現れる一過性のもの。ステロイド外用薬での治療が終了して使用をやめれば、ほとんどが治まります。

ステロイドの「強さ」って何?

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ひと口にステロイドと言っても、さまざまな種類があります。そこで、医療用のステロイド外用薬はその強さによって、「ストロンゲスト<最も強い>」「ベリーストロング<とても強い>」「ストロング<強い>」「ミディアム(マイルド)<普通>」「ウィーク<弱い>」の5つに分類されています。このうち、ドラッグストアなどで購入できるのは「ストロング」「ミディアム(マイルド)」「ウィーク」​の3ランクです。
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