2020年11月13日 更新

太陽を見るとハックション! 「光くしゃみ反射」とは?

新型コロナウイルス流行により、人前でせきやくしゃみをするのもはばかられる今日この頃。でも、まぶしい光を見るだけで、くしゃみが出てしまう体質の人がいるんです。タイミングが悪いと思わぬアクシデントにもつながりかねない、「光くしゃみ反射」についてご説明します。

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日本人の4人にひとりは「まぶしいとくしゃみが出る」?

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「まぶしいものを見ると、鼻がムズムズしてくしゃみが出る」という話を聞いた、または体験したことがありますか? これは、光の刺激で反射的にくしゃみが出ることから、医学的に「光くしゃみ反射(Photic Sneeze Reflex)」という直球な名前が付けられた、一種の体質です。

あれは小学校低学年のとき。
鼻に入れたパチンコ玉が取れなくなって半泣きになっていたS君に、「太陽を見て、くしゃみ出したら?」というと、「太陽を見ても、くしゃみが出るわけないだろ!」とキレられたことがあります。真剣にアドバイスしたのに、なぜ友達に怒られたのか理由がわからず、逆に私が半泣きになりました。

……ええ、実は私自身が「光くしゃみ反射」体質なんです。

私の場合、太陽を見たときに出るくしゃみの数は、1回から2回。花粉症やハウスダストによるアレルギー症状のように、くしゃみを連発することはありません。また、季節や温度差(寒暖差)なども関係なく、太陽さえあれば1年中いつでもくしゃみが出ます(出せます)。

なお、鹿児島大学の研究グループによると「749名を対象にした調査において、日本人の約25%の人がこの反射をもっている」とのこと。また、優性遺伝するため、「光くしゃみ反射」をもつ人は、その血縁者も「光くしゃみ反射」体質である可能性が高いとされます。

つまり、今はマイノリティですが世代を重ねれば、いずれ世界中のすべての人が「光くしゃみ反射」体質に。ククク……。

なぜまぶしいと、くしゃみが出るの?

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さて、古くは紀元前4世紀の哲学者、アリストテレスの「問題集 第33巻『鼻に関する諸問題』」にも出てくるという「光くしゃみ反射」。ところが、21世紀の現在もそのメカニズムはいまだ解明されていません

前出の鹿児島大研究グループは、鼻汁分泌に関係する神経が、目の瞳孔を小さくする筋肉への神経ともつながっていることを発見。まぶしい光の刺激が目に伝わって瞳孔が縮むとともに、鼻水が出てムズムズするためくしゃみが起こるのではないか、と推測しています。

なお、くしゃみを誘発する光の強度には個人差があり、太陽光のような強烈な光を見たときだけくしゃみが出る人もいれば、蛍光灯程度の明るさで出る人もいるようです(私は太陽を直接見るよりも、明るい青空を見るほうが出やすいです)。

「光くしゃみ反射」のメリット・デメリット

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さて、たいして深刻な問題もなさそうな「光くしゃみ反射」体質ですが、実は意外なメリット・デメリットがあります。

そもそもくしゃみは、鼻腔内の異物を体外に排出しようとする、自分ではコントロールできない不随意運動。冒頭のS君のケースは別としても、「くしゃみが出そうなのに出ない」という、もどかしい経験をしたことがある人も多いでしょう。

ところが、「光くしゃみ反射」体質の人は、ティッシュでコヨリを作ったり、コショウを吸い込んだりしなくても、光さえあれば自由自在にくしゃみを出せるのです。地味ですが、意外に便利なメリットといえるでしょう。

一方でデメリットといえるのが、くしゃみによる事故のリスク。くしゃみが出るときは必ず目を閉じてしまいますし、激しく体が動いてしまうこともあります。しかも不随意運動ですから、今まさに出ようとするくしゃみを、自力で止めることはできません。

たとえばBBQで刃物を扱っているとき、日曜大工で電動工具を使っているとき、繊細なガラス細工を運んでいるときなどにくしゃみが出たら、大惨事になりかねません。実際、トンネル出口付近での交通事故や、編隊飛行中の戦闘機の事故などでは、「光くしゃみ反射」が原因とみられるものもあるそうです。

「光くしゃみ反射」は治るの?

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なんだかデメリットが怖すぎる「光くしゃみ反射」ですが、基本的には体質なので治るものではない、と考えたほうがいいでしょう。なかには「昔は太陽を見るとくしゃみが出たけれど、年をとったら出なくなった」という人もいるようですが、単に光の刺激に鈍感になっただけかもしれませんし、何かのきっかけで再びくしゃみが出るようになるかもしれません(メカニズムが判明していないため憶測の域を出ません)。

かつて「光くしゃみ反射」体質だったという人も、晴天時の車の運転や屋外での危険な作業時には、サングラスをかけたり、なるべく太陽のほうを見ないようにしたりする、といったことを心がけましょう。
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