【それゆけ! 禁忌kids】第2回「かぜにも花粉症にも使えるすてきなアイツ」の巻

かぜと花粉症でお困りのお客様(真面目さん)に、おすすめできる薬はあるのか!? 悩む平気くんに「禁忌kids(きんきキッズ)」が出した答えは……?

目次

―前回までのあらすじ―
ドラッグストアで働く平気くん。かぜと花粉症でお困りのお客様(真面目さん)に、おすすめの薬を取りに行ったところ、そこで出会った薬の妖精「禁忌kids(きんきキッズ)」に、かぜ薬と鼻炎薬の併用は「禁忌(してはいけないこと)」だととがめられてしまいました……。

だったら、使える薬はあるの?

平気くん(以下 平気)「いっしょに使っちゃダメだし、片方だけ使っても運転しちゃダメだっていうし。だったら、車で営業に回る真面目さんにおすすめするものないじゃん!
と、困り顔の平気くん

キーくん(以下 キー)「まあ、ないわけじゃないけどな」
少し得意げにキーくんが返します。

平気「なんだよ、そのかぜにも花粉症にも使って平気だっていうやつ、早く教えてくれよー!」
一刻も早く真面目さんに薬を届けてあげたい平気くんは、キーくんにくってかかります。

キー「まあ、待てよ。一刻を争う重病ってわけじゃないんだから、慌てなくても大丈夫だろ。もう少し情報をくれ。その人は体力ありそうか?

平気「体力? そんなの関係あるのか? 真面目さんはバリバリ外回りしてるからそれなりに丈夫だよ。ふだんはサッカーもやってるっていうし」

キー「そうか。だったら高齢者ってわけでもないんだな?」

平気「なんだよ今度は。若者だろうが、じいさんだろうが、ダメ元で試してみようぜ! 平気だろ? 効かなきゃ、別のを飲ませればいいんだし」

服用する人の情報って、ホント大事

キンちゃん(以下 キン)ダメよ、ぜったい!
今度はキンちゃんに怒られます。

キン「お薬を売っている人が、『ダメ元』なんて言ってはダメよ。お薬っていうのはね、正しく使えば病気を治せるけど、間違った使い方をすると、命にかかわることもあるものなの」

キー「そうだ。市販薬だからって絶対安全てわけでもないんだぞ。身近な総合感冒薬や解熱鎮痛薬だって、毎年のように重い副作用の患者が出てるの知らないのか? 死んじゃうこともあるんだぞ」

平気「え、そうなの……? 一番ポピュラーな薬なのに……」
思いもよらない話に平気くんも驚きを隠せません。

キン「使う人が多いっていうこともあるでしょうけど、注意しなければならないお薬でもあるの。どんなお薬でも副作用はあるのよ。それに、市販薬はいろいろな成分が入っているから、注意することも意外と多いの」

平気「ゴメン。オレ、バカだった。真面目さん、水みたいに鼻水たれ流してるし、ゴホゴホせきもしててかわいそうで……」
しょぼくれる平気くんの隣で、キーくんが目を光らせながら言います。

キー「なるほど、鼻水はサラサラな感じなんだな。だったら、やっぱりあれが良さそうだ」

キン「そうね、あれで決まりかもね」
キーくんとキンちゃんは、何かを確信したかのように顔を見合わせてうなずきます。

平気「なんだよ、もったいぶってないで教えてくれよー」

え、まさかの漢方!?

キー「じゃあ、教えてやろう! 真面目さんにおすすめなのは、この『小青竜湯(しょうせいりゅうとう)』だ!
キーくんが、バーンと誇らしげに商品を掲げます。

平気「へ? なんだ、漢方か
拍子抜けする平気くん。

キー「あ、おまえ今バカにしただろ」

平気「だって、漢方なんて古くさい感じがするし、ホントに効くの?

キー「そんなこと言って、いつも売ってるんじゃないのか?」
と、キーくんに詰め寄られた平気くん、

平気「そうだけど、漢方って、種類も多くてよくわからないし……」
とモゴモゴ。それを聞いたキンちゃんは平気くんをやさしく諭します。

キン「そんなことじゃダメよ。漢方って、似たような病気に対応する処方がいくつもあるからわかりづらいけど、逆にいえばそれだけ細かい症状に対応できるってことなの」

平気「そう聞くと、なんだかいい薬って気がしてきた!」

バシッと「花粉症」に効くアイツ

キン「でしょ? この小青竜湯は、かぜ(感冒)鼻炎症状に使われるんだけど、水みたいにサラサラな鼻水を出している人にぴったりな処方なの。市販薬では珍しく『花粉症』って効能も認められているのよ」

キー「そうだぞ、ほかの鼻炎用内服薬だと、『花粉などの~アレルギー症状~』なんて回りくどく言ってるけど、これはバシッと花粉症だぞ!」

平気「お、オレ、そういうの好きだ! よし、これをバシッと真面目さんに!」

キン「待って! 使い方にも気をつけるとさらに効果的よ。漢方薬の多くは、空腹時に飲んだほうが効果が高いといわれているの。だから、『食前』や『食間』に服用って書いてあるわけ」

キー「『食前』は、食事する30分以上前、『食間』は食事を終えてから2時間ほど経ったときのことだ。知ってるよな?」

平気「もちろん知ってるよ! 『食間』っていっても『食事してる最中』って意味じゃないんだろ? じゃあ、この小青竜湯を渡してくる!」

平気くんがバックヤードから出て行った直後に、店内でガラガラガッシャーン」と大きな音が。

キー「大丈夫かな、あいつ?」

キン「そうね、心配ね……」

―つづく―
今回の「ダメ、ぜったい!」
~ちゃんと確認しなきゃダメ!~


かぜと花粉症に悩まされている真面目さんに、早く薬を届けてあげたい平気くんをじらすように、細かく真面目さんの情報を確認していた禁忌kidsでしたが、なぜなんでしょう?

今回は漢方薬の「小青竜湯」をおすすめしていましたが、漢方薬では、服用する人の「体力」が重要なのです。「小青竜湯」の添付文書(医薬品の使い方などが書かれた文書)を見ると「体力中等度又はやや虚弱で、~」と書かれていますが、処方によっては、体力中等度以上~」「体力充実して、~などと書かれたものもあります。これは、体力がない人に強い薬を使ったり、逆に体力が充実している人に虚弱な人向けの薬を使ったりすると、かえって体調を崩してしまうことがあるためです。

また、高齢者かどうか確認したのは、「マオウ」や「カンゾウ」という生薬のはたらきによって、心悸亢進、血圧上昇などが心配されるため。こちらも同じく添付文書に「相談すること」として記載されています。

どんなお薬も、適切かつ効果的に使うためには、添付文書をよく読むことが大切。正しく使って、早く病気を治したいですね。