第一話「Win-Winからはじめよう」
シフトの休み明け、今日は早番なので朝イチの出勤だ。
眠い目をこすりながら「今週末はセールか…」と考えているうちに、勤務先のドラッグストアに到着した。
すでに従業員入口の機械警備は解除されている。
入ると同時に、出勤しているであろう店長に声をかけた。
「おはようございます」
業界標準の、何時でも変わらない「おはよう」の挨拶。
すると、肥満で血圧も血糖値も高い店長(30代、男性)が、店舗PCの前に座ったまま、挨拶をすっ飛ばして興奮気味に話しかけてくる。
「季節品の売上がすごく伸びてるよ! あのエンド(※)に並べたアイテム達のおかげだね!」
眠い目をこすりながら「今週末はセールか…」と考えているうちに、勤務先のドラッグストアに到着した。
すでに従業員入口の機械警備は解除されている。
入ると同時に、出勤しているであろう店長に声をかけた。
「おはようございます」
業界標準の、何時でも変わらない「おはよう」の挨拶。
すると、肥満で血圧も血糖値も高い店長(30代、男性)が、店舗PCの前に座ったまま、挨拶をすっ飛ばして興奮気味に話しかけてくる。
「季節品の売上がすごく伸びてるよ! あのエンド(※)に並べたアイテム達のおかげだね!」
ああ…エンドで展開中の季節品の、販促売り場だな。
プロモーションの効果が早くも出てきたのか。
オレにとっては“常識”である商品の陳列方法とその威力に大喜びする店長。
やれやれ、ちょっと解説してあげようか…。
「店長、それは“売り場プロモーション”といってですね…」
プロモーションの効果が早くも出てきたのか。
オレにとっては“常識”である商品の陳列方法とその威力に大喜びする店長。
やれやれ、ちょっと解説してあげようか…。
「店長、それは“売り場プロモーション”といってですね…」
――あれは2カ月前。
気がつくとオレは、見知らぬ休憩室で目覚めた。
『――このダンボールの匂いと、放置された化粧品のテスターは。。。』
周囲の雰囲気や、バックヤードの在庫の様子はなじみ深いものだった。
どうやらそこはドラッグストアのようだ。
オレは確かに、新卒で就職してからずっと、いたって普通のドラッグストアの店員だった。
しかし、働いていたのはこの店ではない。
見慣れないシフト表。
着ている制服も違う。
そう、理由は不明だが、どうやらオレは、異世界のドラッグストア店員として転生してしまったのだ。
異世界といっても、世界観的にはもといた世界と大差ない。
科学技術も、世界情勢も同じ。
ただ異なっていたのは、もとの世界よりも、ドラッグストアのノウハウが30年遅れていたことだった。
転生のオマケでチート能力を授かったわけでもない。
(ちなみに鏡を見たが、イケメンになったわけでもない…)
しかし、30年ノウハウが進んだ世界から来たオレのドラッグストア知識は、この世界ではまさにチート!
平凡だったオレのドラッグストア人生は、こうして新たに輝きだした――
「…というわけで、あるテーマについて関連する商品を1ヵ所にまとめて陳列しておくと、お客様がある商品を購入する際、関連した商品購入の必要性に気付いて購入してくれるんです。」
「たとえば、かぜ薬を買いに来たお客様に、マスクやうがい薬の必要性に気付いてもらうなど、目的の商品にプラスして購入してもらえるわけです。」
「ス、スゴイ、そんなこと、エリアマネージャークラスでなければ使用できないスキルなのに…ヒラ店員のキミが、お店のわずかなスペースを工夫するだけでそんなことが…!」
ヒラ店員は大きなお世話だが、店長はオレの説明に興奮を抑えられないらしい。
顔が真っ赤になっているので血圧が心配だ…。
「ぜひお客様には、店頭で『かぜ』や『行楽シーズン』などのコーナーを見て、さまざまな関連商品を楽しみながら、買い忘れのない、かしこいお買い物をしていただきたいですね。」
興奮する店長に売り場の解説をしながら、オレは心の中でさらに考える。
(フッ、これ以上情報が増えると店長がバクハツしそうだから黙っておくが、オレが操っているのはそれだけじゃない)
(この売り場では、お店のことも考えた品ぞろえになっているのさ…)
そう、このときオレが使用したスキルは、この世界では、営業部長クラスでも操れないとされるエクストラスキルだ。
このスキルによって、お客様がさまざまな商品を購入してくれることで、売り場の利益を確保することができる。
つまり、オレがつくった売り場は、お客さんの利便性とお店の利益を両立するという、この世界の常識ではありえないほどのノウハウで構築されている。
この世界に来てわずかな期間だが、オレのチートノウハウによって、お客さんとお店、どちらもWin-Winな店頭を実現させたのだ。
(フッ、これ以上情報が増えると店長がバクハツしそうだから黙っておくが、オレが操っているのはそれだけじゃない)
(この売り場では、お店のことも考えた品ぞろえになっているのさ…)
そう、このときオレが使用したスキルは、この世界では、営業部長クラスでも操れないとされるエクストラスキルだ。
このスキルによって、お客様がさまざまな商品を購入してくれることで、売り場の利益を確保することができる。
つまり、オレがつくった売り場は、お客さんの利便性とお店の利益を両立するという、この世界の常識ではありえないほどのノウハウで構築されている。
この世界に来てわずかな期間だが、オレのチートノウハウによって、お客さんとお店、どちらもWin-Winな店頭を実現させたのだ。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体は、実在するあれこれと一切関係ありません。
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